工学系研究科都市交通研究室博士2年 植村洋史
2025年6月、ミュンヘン工科大学(ドイツ)にて開催された13th Symposium of the European Association for Research in Transportation (hEART2025)にて研究発表を実施したため、その時の様子を記事としてまとめていこうと思います。国際学会での発表がどのようなものか知りたいという方の参考になれば幸いです。
発表までの準備
学会で発表するためには、まずは論文または概要を提出し、受理される必要があります。スケジュールは学会にもよりますが、hEART2025の場合、2025年1月に概要の締め切り、2~3月に審査があり、4月に審査結果の発表がありました。今回は口頭発表で受理されたため、研究室の先生方とも議論しながら発表資料を作成し、発表直前まで練習を行いました。
学会は6月10日~12日での開催のため、前日の6月9日、羽田空港からロンドン経由でミュンヘンへと向かいました。到着は6月9日の深夜でしたが、翌日に発表があるため、一通り練習をしてから眠りにつきました。
いざ発表
翌6月10日、会場のミュンヘン工科大学へと向かいます。今回ホテルはミュンヘン中央駅の南側のエリアで予約しており、会場まで徒歩約20分、バスを使うと徒歩10分+バス5分程度の距離でした。
私の発表は14時からのため、午前中のセッションで会場の雰囲気を確認したあと、いよいよ発表です。hEART2025では、1つのセッションにつき3~4人の発表者が割り当てられ、1人の持ち時間が30分(発表20~25分+質疑応答5~10分)となっています。国際学会での口頭発表は初めてだったため、発表が始まるまでは緊張していたのですが、練習の甲斐あってか無事に発表を終えることができました。ただ、質疑応答の時間では質問者の意図をいまいち理解しないまま返してしまった質問もあったため、そこは反省点です(往々にして、もっといい返し方があったなと後から振り返ると思ってしまうものです…)。日本の学会では質疑応答の時間でオーディエンスからなかなか質問が出ず司会者が質問をすることも多いですが、海外の学会では司会者が指名する前に我先にと質問が出てくるので、そこは大きな違いだなと感じました。
いちおう内容についても簡単に触れておくと、私はシェア型マイクロモビリティの効率的な運用および導入効果に関する研究を行っており、その一環としてバイクシェアリングの導入が住宅賃料に及ぼす影響を分析したものを今回発表しました(資料はこちらから見ることができます)。
国際学会での交流
自分の研究を英語で発表・議論するということに加えて、海外の研究者との交流も国際学会に参加する大きな目的の1つだと思っています。特に今回参加したhEART2025ではセッションの間のCoffee Breakや初日の夜のWelcome Reception、2日目の夜のGala Dinnerなど、交流の機会が多く設けられていたため、様々な大学の研究者と交流することができました。
また、今回の学会では、ETHのKay Axhausen先生やBenjamin、ミュンヘン工科大学のJoanna、佐藤航貴君が留学していたAjou Universityの先生・学生など、これまで研究室とかかわりのあった方々と再会することができました。このように、国や地域に関わらずネットワークを広げることができ、そしてこれまで会ったことのある方々と同窓会?のように再会することができるというのも、国際学会の魅力なのだと思います
ミュンヘン観光(少しだけ)
6月10日~12日の学会および13日のPhD Schoolを終えた後は少しだけ時間があったため、ミュンヘン市内を観光してきました。都市交通研究室なので交通のことにも簡単に触れておくと、ミュンヘン市内には公共交通としてバス、トラム、メトロが走っており、フリーパスを購入すれば決まった期間・ゾーン内でこれらの交通が乗り放題です。また、日本とは異なり駅には改札もなく、いわゆる信用乗車方式となっています。
今回は時間がなかったため、旧市街地のマリエン広場周辺をぶらぶらと歩く程度の観光になったのですが、新市庁舎やフラウエン教会など重厚なゴシック建築を堪能することができました。また、ドイツといえばサッカー・ブンデスリーガですが、今回の訪問時は残念ながらシーズンオフで試合を観戦することはできなかったものの、旧市街内にバイエルン・ミュンヘンのショップがあり、買い物を楽しむことができました。
おわりに
今回hEART2025に参加して、他の研究者の発表や議論・交流を通じて今後の研究に生かせそうなアイデアも得ることができ、有意義な滞在となりました。また、国際学会に参加すると海外にまで研究のネットワークを広げることができ、とても刺激的な時間を過ごすことができました。一方で、自分の英語力不足も痛感することになったため、これからの日々の研究活動や日常生活でも向上を図りたいと思います。研究室としても、国際学会での発表を含め研究において何かに挑戦することに関しては先生方も前向きにサポートしてくださるため、大変ありがたい環境だなと感じています。今回このような機会を与えてくださった先生方や、hEART2025で出会った方々に感謝しつつ、これからも研究活動に励みたいと思います。