教育指導の取り組み・教育活動の特色及び強調点
授業は、都市工学専攻の学部ならびに大学院の授業ならびに早稲田大学商学部の都市交通計画研究、首都大学東京の地域開発工学特論などがある。それらの内容の基本は、都市交通計画の基本的考え方、手法、事例の解説であり、学生や院生に、さまざまな問題を把握して分析するための基礎知識を教える。授業に参加して考えさせる工夫として、学部の都市交通論と都市交通施設計画では毎回授業内容に関連した小問を出題し回答させている。大学院の授業では、論題を決めて、ワークショップ形式で、院生と議論する場を提供している。また、留学生向けの授業としては、2000年度から、冬学期の後半に都市交通計画手法の授業を担当してきたが、2003年度からは、冬学期の前半に移り、都市交通政策の授業を担当している。加えて、2007年度からは、まちづくり大学院にて、交通まちづくりを中心とする都市の交通政策の授業を実施している。
演習は、都市工学演習のほかにまちづくり大学院の大学院生向けの演習に参加しており、学生や院生の自主性を尊重するとともに、価値観の異なる人々に対して自らの提案を論理的に説明するスキルを身につける場として、議論や発表の機会を多く提供している。また、統合的な交通需要予測モデル、GIS機能を具備した交通分析ツールの活用、GPSを用いた情報収集と解析手法の適用など、博士課程の研究成果として開発した分析手法を取り入れている。なお、六年間所属した環境学専攻で実施していた環境空間情報学演習は、魅力ある授業として、東大広報誌「淡青」に取り上げられた。
加えて、授業と演習を補助するものとして、学部、大学院ともに、基本文献や最新事例について分担して発表する、輪講を実施している。
卒業論文は、兼担である工学部都市工学科にて担当しており、週に一回二時間の打ち合わせにより、継続的に指導する仕組みとしている。全員を一同に会した打ち合わせにより、同輩のテーマについても関心を抱くように、全員に向けて議論するようにしている。
修士論文、博士論文については、研究室の院生をグループに分けて毎週二時間の打ち合わせ(一人一月に一回は発表する)をするとともに、研究グループ別の打合せの場を設定している。
大学院の論文指導では、テーマ設定にあたり、高い専門性と幅広い視野を有する研究者として育てるために、以下の工夫をしている。
- テーマ設定は対象とする問題領域を選定するとともに、その解決に必要な手法については新しい手法の開発に取り組むことを原則とする。たとえば、都市圏交通戦略の構築を対象とする均衡配分を拡張した統合モデルの開発、あるいは、活動交通分析を対象とするウェブによる応答型調査を用いたアクティビティマネジメント手法の開発である。
- 研究室内に限らず、院生のテーマに合わせて、GCOE「都市空間の持続再生学の展開」の東京2050プロジェクト、土木計画学研究委員会・交通まちづくり研究小委員会(代表・原田昇)、日本交通政策研究会・総合交通計画研究会(代表・原田昇)、交通工学研究会、豊田都市交通研究所などの外部の勉強会や自主研究に参加させ、専門の異なる研究者と交流する機会を提供している。原則、博士課程院生は全員、関連する研究会に参加させる。
- 外部の競争的資金の獲得に関して、博士課程院生の研究テーマ、あるいは、その分析手法の開発に活用可能なテーマとするように工夫し、外部資金獲得研究テーマの一部を担当する体制を構築するように心がけている。
- 研究室の中心テーマとして、都市圏交通戦略の構築、交通まちづくりの実践、活動交通分析手法の開発をあげており、輪講テーマと関連付けることによる院生全員の参加や助手と博士課程院生による研究グループの構築により、共同研究プロジェクトを体験する場を提供している。
以上、都市交通計画の次代を担う人材を育成する責務に応えるべく、努めている。