研究室の歴史

都市交通研究室は都市交通計画を研究対象分野としている。その主要研究テ-マは、都市化の進展、その後の都市の衰退を背景とした都市交通問題の変化に対応して、個別の交通施設の計画・設計から複数の交通手段から構成される総合都市交通システムの計画へ、また環境・エネルギ-、歴史的環境の保全、都心の活性化、自動車依存の低減、人々の生活の支援といった視点を含めたより広範な社会的課題への対応という形で深化・拡大している。

本研究室は井上孝教授・新谷洋二助教授の担当で発足した都市工学科旧都市計画第五講座に源流を持つ。その後、1978年7月からは新谷洋二教授・太田勝敏助教授が、1992年1月からは太田勝敏教授・原田昇助教授(1999年4月〜2005年3月は大学院新領域創成科学研究科環境学専攻教授)が、2003年4月からは原田昇教授・大森宣暁講師(2010年4月から准教授、2014年8月まで)がそれぞれ担当した。 この間の1999年3月〜2001年3月は、総合試験所所属の室町泰徳助教授と大学院生の研究・教育を一体的に進めた。2015年1月以降現在まで、原田昇教授・高見淳史准教授が担当している。

初代の井上孝教授は都市形態と都市交通体系に関する研究を主要研究テ-マとしていた。昭和40年代前半には、都市高速道路建設に伴う街路網計画、人と車の交通分離、通勤交通、都市高速鉄道網の構成などの研究が講座の主要研究テ-マであった。 昭和40年代後半から50年代前半には、都市における物資流動、新交通システムなどの研究を新谷洋二助教授らが行った。創立期に在籍した鈴木忠義助教授は主として景観計画やレクリエ-ション計画の研究を行った。 新谷洋二助教授はまた、パ-ソントリップ調査を基礎とする都市交通計画の方法を研究するとともに、都市高速道路計画の発達史の研究も実施した。

1978年、新谷洋二教授が講座を担当する頃からは、都市交通路線網の計画に関する事後評価をはじめ計画史・土木史の研究、歴史的視点をとり入れた計画論の研究を深めた。 太田勝敏助教授は、非集計行動モデルの導入によって従来の交通需要予測手法を改良することを提案するとともに、システム分析の手法の適用による交通計画の体系化を目指した研究を進めた。加えて、東南アジアの都市における都市計画・交通計画の研究、計画の実現可能性からみた都市施設の計画方法などについても研究を遂行した。 研究室としては、昭和60年頃からは不確実性下での計画手法の研究、歩車共存を目指した地区交通計画の計画論・手法の研究、時間価値の推定方法、意識デ-タの活用手法、駅前広場・バス交通の計画・設計研究、駐車場の整備手法・整備効果などの研究を行い、研究の進化と後進の育成に努めた。

1992年、太田勝敏教授が講座を担当して以降は、開発途上国の都市計画・地域計画、留学生教育、国際的な情報発信にひとつの重点を置き、国際大学間共同研究であるAlliance for Global Sustainability(AGS)の一環として、アジア大都市を中心に持続可能な交通戦略をテーマとする国際比較研究を進めた。交通需要分析手法の開発は継続的に進め、費用便益分析、誘発交通分析の手法を整備するとともに、国の交通需要予測マニュアルの整備や東京のロードプライシングの検討などの実務的課題に成果を適用してきた。 原田昇助教授は、交通行動分析の確立、交通需要管理施策の設計・評価手法の開発、都市圏交通計画の事後評価を進め、都市交通計画の新しい方法論をまとめて、その適用に努めてきた。 研究室としては、1999年以降、交通GISを活用した土地利用・交通分析、IT技術を活用した調査手法、詳細な活動・交通シミュレーション、大規模都市圏に適用可能な統合交通モデルの開発、ならびに幹線道路網計画における合意形成手法、公共交通計画立案手法とその計画制度のあり方などの研究を進めた。

2003年、原田昇教授が講座を担当するに至ってからは、都市化の進展から衰退への転換、経済成長、環境保全、社会的公平など政策目標の多様化に対応した長期開発戦略と短期管理計画の再構築をテーマに研究を進めている。 特に、交通需要予測、活動・交通分析、交通行動分析の計画手法の改善と新しい交通サービスの提案を目指している。加えて、環境や公平性に配慮した持続可能な土地利用・交通戦略の構築、市民や企業を巻き込んだ交通まちづくり、都市と交通の望ましいかたちを実現するための計画制度のあり方、IT技術を活用した交通調査手法の改善など、新しい課題に取り組んでいる。